飛龍革命

カテゴリー │プロレス

 あまりに慌ただしくてパソコンに触る暇もないくらいのなか、ご無沙汰してました。
 お茶濁しに、ちょっと思っていたことをひとつ。

 「世界三大革命」というのは世界史を習った人ならばご存じだと思います。
 ひとつは「フランス革命」(1789年)。日本では「ベルサイユのばら」で有名です。
 ふたつめは「産業革命」(18~19世紀)。急激な大規模工業化が進展し、中産階級が出現しました。
 そして三つめは、日本で起こった「飛龍革命」(1988年)です(?)。



 ……「前田・佐山のUWF革命だろ!」「いいや天龍革命は外せない!」と異論もあろうかと思いますが、まあ、プロレスの話です。
 もう25年くらい前の話ですので、誰?っていう人もいるでしょうし、お笑い芸人のモノマネで見たことがあるという若い人もいるでしょう。
 一部聞き取りにくい箇所もありますが、若手から中堅になっていたエース、藤波辰爾は、師匠格で当時社長でもあったアントニオ猪木がいつまでも団体トップに居座っている現状に、俺にもやらせろと髪を切って猛抗議したのです。
 それを受けて猪木は、やりたいんだったら実力で俺を超えてみろと張り手をして発破をかけたわけです。

 それを思い出したのは、ある若い学者のインタビューを雑誌で読んだからです。
 あえて名前を挙げませんが、この学者は現在も大学院の院生で、昨年に出版した研究が大評判になり、権威ある賞も受賞した気鋭の研究者です。昨今20代の活きのいい若手研究者が相次いで著書を発表し、既存メディアやネットからも寄稿や出演を求められるなど活躍していますが、この若い学者もその先頭集団に躍り出ました。
 その人の発言です。

 「よく民間企業で、バブル世代がだぶついて若手のポストが空かない、という問題が指摘されますが、学者の世界も同じ構造的不遇があります。50~60歳くらいが大勢いてポストが空かず、40くらいでまだ定職がない人がいる。
 (中略)学者の世界に限らずさまざまな意味で、年配者は、もっと若者を信頼して、勇気をもって退いていただきたい。じゃないと社会の閉塞感なんてなくなるわけがない。」(「週刊朝日」2月17日号、強調は引用者)

 私はこのインタビューを読んで目をひんむくくらい驚きました。
 これが「希望は戦争」なんていうフリーターの発言ならば鼻で笑って読み飛ばすだけです。でも、この人は、誰も注目していないテーマを、一人で黙々と取り組んでおり、奇をてらった発言などせず、しっかりと地に足を着けて活動していた研究者なのです。
 この発言には「飛龍革命」で藤波が示した気概のかけらもありません。勇気を持って退けって言われたって、猪木だって困ってしまいます。闘魂注入張り手も出しようがありません。気合いを入れてもそのまま漏れてしまいそうです。

 学者の世界は封建的と言われます。理科系はわかりませんが、文科系の若い学者は積極的に発言し、ブログやメルマガなどでどんどん活動の場を開拓しています。
 売れっ子の学者は少子化に苦しむ大学にとっても魅力なので講師や准教授に登用されることもあります。仲間の研究者グループと会社を作って活動している人もいます。
 そんな若くて能力の高い学者を、先輩の教授らが引き揚げてくれたりメディアに紹介したりということもあります。
 プロレスの世界と似ていて、上下関係がしっかりしているようで、売れたもん勝ちのようなところがあります。

 この学者を悪く書きましたが、同じインタビューで、「上の世代が作った枠組みをぶっ壊す意識が欠けている」などと同世代の欠点をよく把握しています。この人自身も象牙の塔に閉じこもっておらずに、IT企業で働いたりフリーライターとして活動してきたことが紹介されています。
 上の世代は(私も含めて)、実は、若い世代の台頭を望んでいます。
 ただし、「退いてください」と言うような人は、あなたこそどうぞお引き取り下さいと言うしかありません。
 この年になって見えてきましたが、私たちや上の世代も、実力をつけて、陰に陽にアピールして、今のポジションにいるのですから。

 藤波はその後、チャンピオンとなり、手腕や評価はともかく新日本プロレスの社長にまで上り詰めました。
 現在は旅番組のリポーターやバラエティ番組で若い芸人にいじられるなどテレビでも人気は高く、その一方で58歳の今でもリングに上がっています。
 藤波と同世代のレスラーはどの団体でも自分の力と運で主役の座をもぎ取ってきました。先輩の馬場・猪木もそうでしたし、後輩にあたる「闘魂三銃士」(武藤・蝶野・橋本)も、他団体の「四天王」(三沢・川田・小橋・菊池)も、さらにその下の世代も、血だらけ、あざだらけになりながら上を目指し、活躍の場を自分で作っていきました。

 プロレスでもアカデミズムでも他の業界でも、「四角いジャングル」はいつでも若い力を待っています。

 やれるのか、おい!出でよ、平成の「飛龍革命」!


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