たいいん!

カテゴリー │いろいろがんとともに

 入院した2月終わりから春になりました。固いつぼみだった近くの高校の桜が満開となり、やがて散り、葉桜となりました。

 ウメやこぶしがモモ、タンポポになり、ハナミズキが咲き、そして、紫陽花の季節になってしまいました。

たいいん!

 季節は移り、そして、私も昨日退院しました!

 3か月間! 長かった!

 もちろん、私より重篤な長期入院患者もいるので、ぜいたくは言えないのですが、それでも暗いトンネルだった……。

 症状を簡単に説明すると、服用していた薬が肝臓に副作用を起こして、危険な数値になったためです。

 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれていて、自覚症状がほとんどありません。私は約2週間に1回、定期的に血液検査を受けていたので、早期発見できましたが、検査をおろそかにしていたら、たぶん今頃この世にはいなかったでしょう。

 ステロイドの錠剤(商品名「プレドニン」)を、大学病院でも例がないほど服用されました。何せ教授が驚いたほどですから。

 主治医「1日に120㎎飲んでます」
 教授「120mg!?」
 主治医「はい、120です」
 教授「ああ、20ね」
 主治医「いえ、120です」
 教授「そう、120ね……。まあ、そのうちよくなるから」

 ステロイド剤をそんな服用していたら、健康な部分も悪くなります。高血糖の合併症を引き起こして、食事も飲み物も厳しい制限がかかりました。間食ももちろんダメです。

 他にも、ステロイド剤の副作用を抑える薬がみるみるうちに増えていきました。いったい私は何の病気を治すために入院して、何の薬を飲んでいるのか、さっぱりわからなくなりました。やがて、薬の副作用が出てきたのか、はたまた大量服薬のせいか、体も心も調子が悪くなってきました。

 新型コロナウイルスの影響で、病院内も移動が制限されました。入院患者がテレビを観ながら談笑していた共同スペースにいると事務員さんが、歩行訓練と称した病棟内の散歩をしていると警備員さんが飛んできて、丁寧な物腰ながら、毅然と注意されました。

 行ける場所は狭い4人ベッドの病室と、同じ階の廊下くらいでした。診察と検査、リハビリや自主運動以外はスマホをいじるか、アマゾンで気軽に読める本を買うか、コンビニで400円で買えるマンガを読むか。それくらいしか楽しみはありません。
 
 最大の楽しみは、食事でした。ナチスの強制収容所を描いたヴィクトール・フランクルの『夜の霧』でも、元衆議院議員・山本譲司の『獄窓記』でも、そんな記述がありましたが、まったく同じでした。

 そして、最も辛かったのは、終わりが見えないことでした。検査の数値を待つだけで、あとはまな板の上の鯉です。

 これは「自粛」を強いられていた(いる)人と同じ感情だったでしょう。文句はあろうが、政府や自治体や「自粛警察」に血祭りに遭うことを考えると、息をひそめて災禍が去るのを待つしかありません。

 私の場合は3か月でした。これで終わりではなく、心身が弱っているところもありますし、通院も頻繁にあります。手術などがん治療も先送りです。母のお世話になっている福祉関係者への連絡・連携や、遅れている行政への手続きの数々も急いでやらなくてはなりません。それでも、自宅に帰れたことは、うれしいことです。

 また、経過観察や検査の次第では、病院へ戻されることもあります。

 「なんでもないようなことが 幸せだったと思う」というつまらない歌詞を思い出しながら、退院直後昨日はコンビニ弁当やラーメンを腹いっぱい食べて、ついでに生ビールを飲みました。美味しゅうございました。医師や管理栄養士さん、せっかくの栄養のアドバイスを無視してごめんなさい。

 そして、ずっと観たかったDVD「フィールド・オブ・ドリームズ」を鑑賞しました。

 特別なことは何もしていないのに、幸せが充満した2日間でした。

 入院中、お世話になった方、おひとりずつお礼は申し上げられませんが、ありがとうございました。

 さあ、明日もやることいっぱいだ。無理しない程度にがんばるか。

たいいん!


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