未来の法廷は文楽を裁けるか?

カテゴリー │映画・演劇・その他

 シェイクスピアの演劇を、現在観ることはできません。戯曲と残っている資料から想像するしかありませんが、忠実な再現は不可能です。
 日本でも同じです。歌舞伎の創始者といわれる出雲阿国の「阿国歌舞伎」も、史料しか残っていません。
 演劇の保存ではもうひとつ課題があります。映像ソフトでは会場のライブ感までは収録できません。唐十郎や寺山修司らのアングラ劇や、「遊眠社」「第三舞台」などの小劇場演劇は、一部はDVDなどで観ることはできますが、当時の時代が作りだした熱狂は、テントや劇場にいた人しか味わうことはできません。
 演劇は原則として一回性の芸術で、再現不可能な作品です。

 ただし、日本の伝統芸能はその限りではありません。
 そのうちの一つは、能楽です。
 私はほとんど詳しくないのですが、室町時代の観阿弥・世阿弥の頃から一子相伝で芸を継承者に伝承しています。有名な『風姿花伝』すら自分の子どもにしか見せることは許されなかったそうです。
 それゆえ、かつての能楽の姿を現在に至るまで伝えることができます。
 (ただし、今は独立行政法人日本文化芸術振興会で伝統芸能の研修制度があり、世襲でなくとも能楽師になることができます)

 そして、もうひとつが文楽(人形浄瑠璃)です。

 何度か書きましたが、大阪の大学に在籍していた頃に、文楽の研究家の先生に執拗に勧められ、学生でも安い料金だったので、たった2度ほどですが、観劇しました。
 感想は、正直言ってよくわからないけど、古文が好きだったので筋は面白かった、というものです。
 どうしようもない感想です。小学生の読書感想文でもこんなものありません。
 ただ、一般庶民の家庭に育った者としては、これが精いっぱいだと思います。


 

ふたりの前田敦子

カテゴリー │音楽

 何と!前回から約1カ月更新なし!
 怠惰って、おそろしいですね。

 実はサボっていたのではなく、夏バテでダウンしていたのです。
 食欲もなく、熱中症防止のために水分ばかり摂っていました。
 おかげで何となく太ってしまいました。ポカリスエットって意外とカロリーあるんですね。

 というわけで、ブログ再開第一弾はAKB48の話から。
 秋元康という人が上手いな~って思うのは、「語らせる仕掛け」をたくさん用意してあることなんですね。
 どうでもいいやと思いながら、ついついしゃべってしまいたくなるという。
 この吸心力(引きつける力)は企業や街おこしグループの方は学びたいところです。

 少し前に、音楽番組でAKBの曲を聴いたんです。なんでも〈前田敦子〉の最後の出演ということで。
 彼女は泣きじゃくって歌えなくなったんです。
 思いましたよ、「あー、この人たち最後の最後まで素人集団だ」って。
 でも、あそこで泣かないと、視聴者は納得しないんですね。



 ナイアガラの滝を見た観光客が「わーすごーい、CMと同じだー」と感動する様をブーアスティンが「電影(イメージ)の時代」と看破したのがちょうど50年前です。
 やがて「イメージ」は「シミュラークル」となり、自律的な運動を始めます。
 20歳の一女性である「前田敦子」さんは、その実像を離れ、シミュラークルとしての〈前田敦子〉として受容されます。
 〈前田敦子〉は、あそこで泣かなくてはならないのです。「前田敦子」さんの意向に関わらず。

 その端的な例として、「あつみな」という言葉があります。ネット用語というよりも、「同人用語」というほうが近いでしょう。
 「前田敦子」さんと「高橋みなみ」さんはAKBの同期生で私生活でも仲がいいのですが、私が「あつみな」という言葉を知ったのは今年の3月以降です。知ったというか、湧いて出てきたというべきでしょうか。
 きっかけはもちろん、「前田敦子」さんがコンサートでAKBの「卒業」を発表し、「高橋みなみ」さんがフォローした場面です。
 そこから「あつみな」という言葉が熱心なファン以外にも広まり(正しくは「あつ×みな」でしょう)、雑誌のキャプションにもなりました。
 私は非常に強い違和感を覚えました。もしこの二人が、本当は仲が悪かったら?陰で罵り合っていたら?おそらく受け手は大混乱するでしょう。
 つまり、受け手のイメージありきです。
 第一、「あつみな」はそれほどファンに膾炙してなかったはずです。それまでは「あつゆう」(〈前田敦子〉×〈大島優子〉)だったはずです。

 AKBの東京ドーム公演は日本テレビの24時間テレビで中継されるとのことです。
 翌日の秋葉原の専用劇場での公演はフジテレビが中継するらしいです。
 仲谷明香さんの本によると、秋葉原の劇場はAKBの原点であり、東京ドームでコンサートをした後で(ここが重要)、秋葉原の250人の観客の前でいつものように公演を行うのが目標だったそうです。
 そんな大事な場所で、本人や周囲の意向に関係なく、泣いて過呼吸になり歌えなくなる〈前田敦子〉を演じなくてはならないのですから「前田敦子」さんは本当に気の毒だと思います。

 あっちゃん、卒業おめでとう。これで〈前田敦子〉を演じなくてもいいね。
 これから女優をやっていくのなら、空いた時間で少しは演技の勉強もできるね。