「看護師を卒業します」

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「看護師を卒業します。これで夜勤からも解放だー! やったー!」

ラジオから流れてきたお便りです。

白衣の天使のイメージは今いずこ、看護師は激務です。マニュアル作業でなく、患者一人ひとりに合わせて仕事し、ミスは命に直結します。人間関係のトラブルやストレス、モンスター患者……。それが昼も夜も毎日続きます。

日本看護協会の調べでは、2017年の常勤看護職員の離職率は10.9%。新卒看護師は7.5%。この傾向は横ばいです。

毎年1割の看護師が退職していきます。残された看護師は報酬が上がらない職場で、過重労働に耐える、負のスパイラルです。卒業が頭をよぎるのも無理はありません。

私も家族も何人もの看護師にお世話になりました。

父が突然倒れて夜に搬送されました。当直は、いかにも医師免許取り立てのわかばマークでした。

「できることは何でもしてください」

誰もがするように、私たち家族は医師に懇願しました。

わかば医師は何度も症状の説明をしてくれました。でも素人の私たちには要を得ないものでした。見かねた看護師長が話をしてくれました。

「お父さんの容態はいつ急変するかわかりません。何でもしてくださいと言われたので、危なくなったら生命維持装置を付けます。一度付けたら外せません。殺人になります。装置を付けたら転院先はこの辺りだとこの病院しかありません。装置を付けなければ、他にも受け入れてくれます。ですが……」

ベテランの師長は、事実を淡々と話しただけでした。

「それって、死んじゃうってことですよね」

家族3人、沈黙しました。

「皆さん悩まれます」

転院先では、私より少し年上の中堅看護師と気が合い、雑談も交わす間柄になりました。浜松市の総合病院に就職後、出産のために退職しましたが、お年寄りや寝たきりの患者が入院する今の病院に再就職したとのことでした。

「今年は猛暑だったから夏は越せないって思っていたけど、しっかりしていてよかったです」

家族の前でそんなこと言うなよと未熟な新人看護師になら怒ったでしょうが、信頼関係が築かれていた看護師からは逆に安らぎを覚えました。

父の最期を看取ってくれたのも、この看護師でした。

苦労して世のため人のために頑張った人が、疲れ果てて「卒業」することは、この国では珍しくなくなりました。

だったら、「再入学」も考えてもらえませんか?

今の職場で得た知識、技能、経験は、別天地でも必ず役立ちます。

亀の甲より年の功。「老害」と陰口叩かれても柳に風、社会に必要な存在になってもらえたら、と、第二の人生を応援します。
…………
写真は病院内にずらっと貼られた学会や研究室のポスター。どの仕事も、一生勉強ですね。



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