みちのく「福幸(復興)」の旅(考察編)

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 仙台を中心とする宮城県から、ちょっと足を延ばして岩手県を訪れました。
 電車の車窓から見える稲刈り後の広大な田んぼは、貧乏旅行をした学生時代と変わらず、東北が日本の穀倉であることを意識させられます。
 静かにうねりながら美しい風景を見せる北上川に心を取られましたが、流域には重機やがれきが置かれており、津波が川を逆流しながら一帯を飲み込んだことを思い出させてくれます。

 東北の旅から帰ってきました。
 言葉にならないほどの辛苦を経てのドタバタ旅行で、「もう絶対に夜行バスには乗らない」と決意しましたが、その話はまたいつか。
 ブログのリポートではいまだ爪痕がひどく残る悲惨な現状を報告しましたが、ネガティブに書き過ぎたかと反省しています。
 本当は、東北はこんなに元気になりました、とか、被災した人たちは困難に立ち向かっています、とか、前向きなことを載せたかったのですが、表面的な被害ばかりに目がいってしまいました。
 現地では、ゆっくりとではありますが、確実に復興に向かっています。

 ただ、ちょっと思うことはありました。
 訪れた沿岸部は、もともと過疎化・高齢化が進展していた町だったのです。
 電車は1時間に1本しか来ないところもあります。市内を走るバスも、1時間に1~2本で、バス停の時刻表に書かれた予定時刻はスカスカでした。車内の広告も自社のPR以外はほとんどありません。
 昼間に電車やバスに乗る人は、ほとんどがお年寄りでした。路線バスでは客席におばあさんとお孫さんが一組だけ、というところもありました。朝晩は学生が加わりますが、いずれにしろ、車を運転できない人たちです。
 東北といえば米どころで知られていますし、被害が甚大だった沿岸部は漁港や海産物加工業者がひしめいていたところです。東北の農作物・魚介類が抜群に美味いことはたっぷり堪能、いや、体験できましたが、第一次産業に従事している人たちは、高齢者が多く、若者は地域の外に流出していきます。
 壊滅的被害を受けた市街地の商店街が「復興商店街」を立ち上げましたが、もともと「シャッター通り」だった商店です。観光客や視察に来る人たちが多く、地元の人の利用は比較的少ないという話です。地元新聞によると、再建されたスーパーやショッピングセンターに客足が流れ、商店主たちも「復興特需」だと割り切っているそうです。

 ぜひとも行きたくて行けなかったところに、宮城県の女川町というところがありました。
 牡鹿半島の先端に近いところにあり、ここも大きな被害を受けました。
 自分の目でその状況をぜひ見たいと思っていましたが、断念しました。とにかく交通の便が悪すぎるのです。
 震災以前は電車が2時間に1本です。被害が甚大だったので代替バスも走っていますが、最悪、1本逃したら3時間も待たなくてはなりません。これでは日常の足にはなりません。
 ここまで交通不便な田舎なので、水産業・水産加工業以外には目立った産業はありません。
 どれだけ美味くとも産業転換や高齢化などで先細りとなると、「禁断の果実」に飛び付かざるを得ません。
 そうです。女川町には東北電力女川原子力発電所があり、電源三法による潤沢な交付金を受けています。

 震災や原発事故は、もともと静かに進展していた問題を、一挙に表面化させました。
 これまでなんとなく問題になっていた地方の問題―過疎、高齢化、商業の衰退、雇用の場の減少と若者の流出、など―を浮上させました。
 これは、被災地だけでなく、東北全体に言えることです。
 昔から東北は中央から見捨てられた地方でした。
 「白川以北一山百文」と侮蔑された東北は、近代以降は中央政府の周縁部として、軽んじられてきました。
 豊かな農作物や魚介類も、自然によって不作・不漁だと飢饉となり、餓死する人も出て、娘を売ったりすることも珍しくもありません。今でも農閑期に出稼ぎに出る人もいます。
 国の政策で第一次産業から重工業への転換が行われ、農家は切り捨てられました。第二次兼業農家が辛うじて補助金漬けで生活できている状態です。
 他の産業が育つこともなく、交付金と抱き合わせで原発や核燃料再処理工場などを誘致することになります。

 そんな日本の地方が抱える問題を、東日本大震災は顕在化しました。
 日本は災害大国です。過疎の課題を抱える山陰や四国や山間部、島しょ部などでも同じことが起こっても不思議はありません。
 東北の問題は日本全土の問題であり、東北の復興を考えるときには、この国のあり方そのものを議論しなくてはなりません。
 復興は、時計の針を3.11以前に戻すことではないはずです。

 そんなことを、今の選挙で訴えている政党がまったく見当たらないのが不思議です。
 東北のこの政治家は何も言わないのかなあ……。
みちのく「福幸(復興)」の旅(考察編)


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