「東野圭吾人気作品ランキング」

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 読書の秋です。というわけで。秋の夜長にザクザク食べるように本を読んでいます。
 昨日読み終わったのが、東野圭吾の最新刊『マスカレード・ホテル』(集英社)。発売日当日に書店でひもでくくられている状態のものを店員さんに「これもらえますか?」と言って出してもらったものです。書店員だったら当代きっての人気推理作家の新刊発売日くらい覚えておいたら?私だったら平台ワゴン全部使って大キャンペーンするんだけどな。


 内容は、普通に面白かったです。妙な日本語ですが、東野圭吾の読者は、肩のこるような純文学なんか求めてないんですね。私もそうだけど、上手くて楽しめる娯楽作品が好まれます。その点、この作者は作品も設定も上手いです。ベストセラーになるはずです。
 一流ホテルが舞台で、そこが犯行現場になるのではとの見込みから、警察が潜入捜査をするという内容です。テレビドラマにもなった石ノ森章太郎の『HOTEL』を読んでもそうですが、巨大ホテルはひとつの都市にも似た、システムが有機的に機能する空間です。だからドラマにもなりやすいし、人間模様もさまざまです。
 本作にもお決まりのクレーマーやスキッパー(宿泊料金を払わずに逃げる客)などの説明があります。そのリアリティの濃密さから、おそらく作者が取材から得た実際のエピソードが元になっているのではと思います。
 私はホテルマンと同じサービス業なので、よくホテルの本を読んだりしますし、高島政伸のドラマも観ていたりしましたが、絶対ホテルマンは務まらないと改めて思いました。私だったら絶対ブチ切れているでしょう。今度ホテルに泊まったら紳士的にふるまおうと決めました。

 さて、同書には出版社からの案内のほかに、「東野圭吾作家生活25周年 あなたが選ぶ人気作品ランキング」という応募はがきが入っていました。
 べつに何かもらえるわけではなさそうですが、ほぼ全作品読んでいるファンとして、こういうアンケートに答えるのは好きですし、AKB48のようにCD買わなくてもいいので、ちょっと考えてみようと思います(順番は順不同です)。

★『秘密』(文藝春秋)
 はじめて東野圭吾を知った本。映画原作になって書店で平積みされていたのを何気なく手に取って、最後のどんでん返しでミステリの醍醐味を知った。広末涼子・小林薫主演の映画はまだ未見だが好評を得た。

★『新参者』(講談社)
 数ある加賀恭一郎シリーズの新境地を開いた作品。切れ者の所轄の一匹狼と、昔ながらの人情が残る下町との対比がまたよい。加賀シリーズは『悪意』『どちらかが彼女を殺した』『嘘をもうひとつだけ』(いずれも講談社)どれも引けを取らないので迷った。

★『片想い』(文藝春秋)
 「青春の終わり」を活写したせつない長編。まだ理解されることが少なかった性同一性障害もテーマにしているがそちらはあまり関心はなかった。SMAPの「夜空ノムコウ」を連想させたが、作者自身が「夜空ノ~」をモチーフにしているとどこかで書いていて、やっぱりと思った。

★『天空の蜂』(講談社)
 2011年といえばこれを選ばざるを得ない。原子力発電所上空に巨大ヘリが現れて、要求に応えないとヘリを墜落させると脅迫される。理系の作者が当時原発について言われていた知識をすべて詰め込んで構成したシミュレーション小説。実際の事故は作者ですら想定していない原因だったのは「事実は小説より奇なり」。

★『超・殺人事件――推理作家の苦悩』(新潮社)
 著者のあまり知られていないユーモア作家としての一面が文壇を舞台にして華やかに皮肉られるメタ小説。『名探偵の掟』シリーズや『怪笑小説』シリーズなどの面にも光が当ててほしい。『夜明けの街で』もユーモア小説として読めるからなー。

 以上、5作品を選んでみましたが、選に漏れたものでもいいものがたくさんあります。これは例えば、映画マニアに寅さんの映画でベスト5を選びなさいとか、演劇青年に野田秀樹の作品で5つ選びなさいと問うのと同じで、ファンにとってはかなり辛いですね。
 とりあえず投票ハガキを出してみます。何ももらえませんが、併記のコメントがどこかで使用されたりするかもしれませんので、もし見つけたら「あ、あの人が書いてたものだ」なんて鼻で笑ってもらえたら幸いです。

(追記・2012年6月29日)
 多くの東野圭吾ファンがこの記事を見に来てくれていますが、前述のランキングがまとめられて刊行されています。
 『東野圭吾公式ガイド 読者1万人が選んだ東野作品人気ランキング発表』(講談社文庫)という本です。
 書店に並んでいますので、ファンの方はお手に取ってみてください。


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この記事へのコメント
東野圭吾さん 今 大人気の小説家です
ホテルという舞台 ホテルの仕事 どんなんかなぁ?昔 バイトで ホテルで 働いていました。宴会の時だけで 料理を 運ぶの 下げるのが大変ですね。宴会後 夜中まで 片付けでした。次の日は 私は 午後からでした。フロントは24時間ですね。
小説同好会(名前検討中
Posted by 村石太ネオ 愛知県発 at 2011年12月07日 22:22
コメントありがとうございます。ホテルの方とも仕事でお付き合いがありますが、本当に大変なお仕事ですね。その巨大ホテルを舞台にエンタテインメントを仕上げた東野圭吾はやはり上手いです。
同好会をされているということで、いつか東野圭吾で議論したいですね。「やっぱガリレオだよ」「いや代表作は加賀シリーズだ」「しのぶセンセは外せないぞ」なんて……。
Posted by 大橋輝久大橋輝久 at 2011年12月08日 14:09
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