浦和レッズの差別問題と「ジャパニーズスタンダード」

カテゴリー │社会

 たった100通か……。

 「サポの人種差別発言へ100通超の抗議メール…浦和」(「スポーツ報知」5月21日)

 リンク先の記事を読んでの通りです。どんな発言があったかは問題ではありません。
 熱狂的な応援で知られる浦和レッズのサポーターですが、これを「行き過ぎた応援」などの言葉でごまかしてはいけないわけです。
 だって、差別は海外、特にヨーロッパでは犯罪扱いされています。前回W杯決勝でフランス代表のジダンが暴行で一発退場して批判されましたが、ジダンをヒートさせた相手選手の発言もまた同様に厳しく指弾されたことを思い出してください。
 それに、逆のことを想像してみればいいと思います。浦和の選手がヨーロッパなどで活躍していて、現地で差別的言動をされたら日本のファンはどう思うか。
 ですから、浦和レッズはチームとして徹底的に事実の究明と断固とした対応をしなくてはなりません。

 それがたった100通の抗議メール……。
 クラブ代表にこんな恥ずかしい声明を出させておいて、浦和サポーターは情けないと思わないのかな。
 選手からして思っていないんでしょうね。記事によると、選手会長の選手は、こう語ったと言います。

 「複雑ですが、僕らは勝つことだけを考えてやっていくしかない。僕らが考えてどうなるものでもない」(同)

 この選手のことはよく知らないのですが、サッカー選手として以前に、人間としてどうしようもない。よくぞここまで他人事でいられるものです。「生半可なことでは済ませない」とのサッカー協会会長の姿勢とは温度差が天と地ほど違います。
 わがジュビロだったらどうしてただろうな。ブラジルや韓国の選手もいるから、毅然とした対応ができるはず……、だと信じたいのですが。

 さて、ここからはちょっとカタい話。サッカーフリークにとっては半可通の話だと思って話半分に聞いておいてください。

 新自由主義の嵐が世界中に吹き荒れたとき、「グローバルスタンダード」という言葉がキーワードになりました。これは、今となっては「アメリカンスタンダード」のことだと理解できるでしょう。
 サッカーの世界では、それはどうやら「ヨーロッパスタンダード」らしいのです。評論家のセルジオ越後が手厳しく日本のサッカーについてゲキを飛ばしていますが、彼がお手本としているのはヨーロッパのサッカーらしいのです。ヨーロッパに比べて、日本は○○が足りないだとか、要領がよくないだとか。愛読している雑誌に執筆していたコラムを読みながら、よく首をひねったものです。
 で、私は思うのです。「『ジャパニーズスタンダード』のどこが悪い!」

 サッカーファンからは「わかってない」と呆れられるでしょうが、技術や戦法のことではありません。
 日本のサポーターは、観戦や応援マナーが海外から非常に高い評価を受けています。それこそ、胸を張って世界に見せられる日本のサッカーです。
 また、反則にはならない程度のズルや、本来ならば反則行為にあたるけど審判にわからないように行為を勧める人もいます。「マリーシア」というものらしいですが(本当の「マリーシア」の意味合いはどうやら違うらしい)、そんなものを子どもに見せたくありません。
 私も子どもの頃に今のジュビロ磐田の試合をよく観戦にいきました。また、サッカー少年団で配られた小冊子に(そう、実は私もサッカー経験者なのです!)、セルジオ越後が子ども向けサッカー教室をしている様子が掲載されていました。もしそういう場で、憧れである大人の選手が反則スレスレの行為をしたり、指導者が「もっとずる賢くなれ」と子どもに教えることは、絶対に納得できません。
 Jリーグもその下部組織も、もちろん学校の部活動も、地域のサッカー少年団も、教育の場なのですから。

 もうすぐ南アフリカでワールドカップがあります。下馬評ではどうやら日本はあまり期待できそうになさそうです。
 それならばなおさら、セルジオ越後がなんと言おうとも、「ジャパニーズスタンダード」を世界中のサッカーファンに見せつけてほしいと思います。もちろん、「12番目の選手」も。
 そのためには、まず、浦和レッズの差別問題について、世界最高レベルの厳しさを自ら課さなくてはいけません。クラブやサッカー協会、Jリーグがどう対応するか、南アフリカW杯へのもう一つの試金石となるでしょう。

 (追記・6月21日)
 下記のコメント、あえて反論も削除もせず、残すことにしました。
 まともな人ならば、心に鈍い痛みを覚える、見たくもない文面でしょうが、このブログが存続する限り、「負の遺産」としてずっと残ります。
 同じ日本人の中に、自分の身元をまったく明らかにせず、こんな浅薄かつ下卑たことを平気で書ける、本当の意味での下賤な人がいるということを、同じ日本人として重く受け止めてもらいたいからです。
 学者や評論家や作家から市井のネットユーザーまで、いかに日本人が素晴らしい民族かを誇らしげに語る人がいます。それがとんでもない思いあがりだということが、この数行のコメントひとつでわかるでしょう。
 なおこのエントリの新規コメント欄は凍結するため新たに書き込むことはできません。


同じカテゴリー(社会)の記事
語られない言葉
語られない言葉(2021-03-11 08:00)

「人間」らしく……
「人間」らしく……(2020-04-01 06:48)

外に出よう
外に出よう(2020-03-19 12:44)


 
この記事へのコメント
対象とされたのは、北朝鮮代表の選手ですよね。北朝鮮という国が暴言をはかれるだけの行為を永遠と日本に繰り返している以上、致し方ない面もあると思います。

なぜか、日本のマスコミは対象とされた選手の国籍を発表しない。なぜなのか。
Posted by :: at 2010年06月19日 23:16

削除
浦和レッズの差別問題と「ジャパニーズスタンダード」