たい平、ぼたん、朝之助

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 風刺やパロディの話はまた今度にして……(ogacci先生すいません。お酒が入っていて真面目なこと書けないので)。

 昨日は浜松で行われた林家たい平師匠の落語会へ行ってきました。通い続けてもう3年目になるのですが、年々会場が大きくなり、今年は中くらいのホールに満席でした。「笑点」で知られているからでしょうが、贔屓の噺家さんが繁盛するのはうれしいやら、ちょっとさびしいやら。
 噺は絶品でした。得意の形態模写もたっぷりと披露してくださって満員のお客さんは大満足。かと思えば後半は父と子の人情話「薮入り」を聞かせてくれて、思わず涙が出そうになりました。「笑点」での師匠しか知らない方は、ぜひ寄席や落語会に出かけてみてください。匠の芸に圧倒されること間違いなしです。マクラが去年と同じだったことは黙っておきましょう。

 去年までとちょっと違ったのは、前座がいらしたことです。たい平師匠の弟弟子、いや、妹弟子(女性だから)の、林家ぼたんさん(二ツ目なのでまだ師匠とは呼べない)が演じていました。
 私は知らなかったのですが、ぼたんさんは地元の浜松出身です。以前浅草演芸ホールの高座でどなたかの師匠の助手をしていらしたときに、「この人は浜松出身です」と紹介されており、「浜松からお越しの方、いらっしゃいますか?」と聞かれ、調子に乗って客席から手を挙げたら「たっぷりご祝儀をはずんでくださいますよ」なんて言われ、こっそりと逃げ帰った思い出があります。そのときは名前を覚えていなかったのですが、女性で浜松出身の噺家なんてそういないでしょうから、たぶんその方でしょう。

 噺のほうは、まだまだ硬く、これからの人でしょう。そんなこと言うと、また愛郷心がないなんて言われるかもしれませんが、地元出身の人だからといって甘い評価をすると、贔屓の引き倒しになって、本人のためになりません。暖かい目と厳しい視点の両方が必要です。
 当地のメディアでも、噺家だけでなく、地元の人だからといって変に持ち上げたり宣伝まがいの記事が載ることがよくあります。応援するのはいいのですが、公平に見てこの人はちょっと……、という人まで地元出身だからといって過大に評価するのはあまり褒められたことではありません。芸能でも何でも「Warm heart,Cool head」の聴衆によってパフォーマーは鍛えられ、上達していきます。

 話は外れますが、街づくりにも同じことは言えます。ショッピングモールなど大型店の進出を法律で規制して街中への回帰を促そうという動きがあります。自治体の中には国の「まちづくり三法」の施行に先駆けて条例でショッピングセンター設立を認可しなかったところもあります。
 じゃあ、地元資本の商店などに人が帰ってくるのかといえば、そうとも言えないところがかなりあります。商品の貧弱さやサービスのひどさを棚に上げ、人や車の動きの変化を言い訳にして、政治や行政の無策に文句を言う店は、消費者が厳しく「NO」を宣告しなくてはなりません。いくら昔から慣れ親しんだ店でも、消費者に誠実でないところは潰れるしかないのです。これはバブル崩壊や規制緩和よりずっと以前からの商売の鉄則です。
 もちろん、小さくともいい店には、消費者が多少のコストを払っても応援することが必要です。これなど噺家さんと同じでしょう。ご祝儀は出せなくとも、寄席や落語会で木戸銭を払って観に行けば、噺家さんのフトコロが潤い、興行主も、あの人を呼べばお客さんが来るといってお座敷がかかります。

 というわけで、たまたま今日ご縁があったぼたんさんを、暖かく、厳しく応援したいと思っています。
 しかしまあ、寄席や劇場に足を運ぶことで、テレビで観ることができない芸人さんや役者さんに出会えるのはうれしいものです。
 たい平師匠を知ったのも、テレビではなく何年も前に観た鈴本の寄席でしたし、この間東京に行ったときには、春風亭朝之助さんという噺家さんが若いながらも上手いなあと聴き入ってしまいました。この方も期待できます。
 後から知ったのですが、この朝之助さんも、静岡出身だったのですね。地元で落語会があったら聴きに行こうっと。

 「林家ぼたん公認応援サイト F.C.ぼたん」 http://www.fc-hayashiyabotan.com/index.html
 このサイトの「ぼたん便り」という文章は秀逸です。落語とジェンダー、読書についての意見などはド正論です。当地の新聞やタウン誌の方、原稿を依頼してみてはいかがですか?
 「春風亭朝之助の春夏冬中(あきないちゅう)」 http://www7.ocn.ne.jp/~akinai/
 ブログはこちら。iTMSでの「にふ亭ぽっどきゃすてぃんぐ寄席」でも噺が聴けますが、生のほうがおすすめです。


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この記事へのコメント
ぼたんってあるから、今はなきフラワーショーかと思ったよ。
お笑いこそが、芸の原点だと思うよ。
天の岩戸開きの踊りも笑いが必要ったんだからね。
Posted by ogacci at 2006年05月27日 20:08
フラワーショーって……。すいません、そのネタ知りませんでした。むしろカウス・ボタンのほうを連想しました。
まあ、間違えられないように芸を磨いて名前を大きくするか、もっと大きな名前を襲名できるように精進してもらいたいものです。先生も機会がありましたら生で聴きに行ってみてください。東京の落語はお口に合わないかもしれませんが、先物買いですよ。
Posted by 大橋輝久 at 2006年05月28日 08:14
高校生向けの布教法の講義で、日本の伝統的な語りを分析したことがあります。
節談説教、浪曲、落語、新作落語、さだまさし、ラップと、語り芸はなかなかの進化を遂げています。
やっぱり、小沢昭一氏の心をたずねるべきなんでしょうね。
今度、東京にいったら是非、生を聴きに行かせてもらいます。
Posted by 小笠原 at 2006年05月28日 12:18
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