声の話・その1

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 「アメンボ赤いな、あ・い・う・え・おー」

 他の所でちょっと書きましたが、仕事の前に発声練習をやっています。
 この歳になると体の筋力の衰えを意識せざるを得ず、同年代の友人たちも、ウォーキングなどで体力不足を補っています。
 私が仕事で使用する「声」も同様で、舌や顎を支える筋肉も徐々に衰えてきます。あまり詳しくないのですが、声帯も筋肉が影響しているらしいです。
 そこを整える、いわば発声器官の「筋トレ」です。

 冒頭の「アメンボ赤いな~」は、北原白秋の「五十音」という詩で、アナウンサーや俳優の滑舌トレーニングによく用いられます。
 私はアナウンサーや俳優志望ではなかったのですが、なぜかしゃしゃり出て練習をしていました。今頃になって役に立つなんて、人生無駄なことは何ひとつないと感慨にふけっています。
 役者などプロの芸能人でなくとも声を日常的に使う仕事はたくさんあります。そういった職業に就く人には役に立ちます。
 下に検索結果をリンクしておきますので、プリントアウトしたりスマホで閲覧するなどしてご使用ください。
 http://www.google.co.jp/search?q=%E3%81%82%E3%82%81%E3%82%93%E3%81%BC%E3%80%80%E8%B5%A4%E3%81%84%E3%81%AA%E3%80%80%E3%81%82%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%88%E3%81%8A&hl=ja&biw=1259&bih=672&sa=2

 さて、声にまつわる面白い特集記事を見つけました。「日経流通新聞」6月8日付です。
 今日(6月9日)までですが、東京で「モテ声カフェ」なるお店ができているそうです。プロの声優が、来店客に甘い声でささやく趣向だそうです。テレビでも紹介されたらしいのでご存じの方もいるでしょう。
 「オマエのがんばりはオレが一番わかっているよ」
 「明日も笑顔でがんばってください」
 そんなセリフを耳元で聞かされたストレスフルな客(記事では客室乗務員)が満足していく様子が記されています。
 ここではプロのボイストレーナーが一般の客に無料でレッスンをするそうです。サイトや記事によれば、好評で定員がすぐに埋まってしまうそうです。10代から50代までの男女が参加するとのことですから、オタク層御用達というわけではなさそうです。
 トレーナーが記事で、「自分の声に悩んでいる人は結構多いです」とありましたから、潜在的需要は多いのでしょう。

 仕掛け人は、ネットプロデューサーと東京工芸大学助教による「声総研」というグループです。
 「コミュニケーションに大切な声が意外にないがしろにされている」とは、プロデューサーの記事中のコメントです。確かにその通りです。
 阪神大震災のときに、通常番組が全部飛ばされ災害報道一色になったとき、避難所で、いつもの時間帯にラジオを聞くと、なじみのアナウンサーが出演していてホッとしたとの被災者からの声を聞いたことがあります。今回の東日本大震災でも、同じ経験をした人も多いことと思います。

 記事には、他にも声優養成コースを作った某4年制大学(あえて名前は出さないが、本気で声優を目指している人はそこには絶対行かないほうがいいぞ)とか、大手芸能事務所が本格的に声優オーディションに乗り出すことなどが載っています。玩具メーカーやケータイキャリアが声を利用したサービスを提供することもありました。

 で、「モテ声カフェ」に門前市をなし、前出のボイストレーナーが話すように、自分の声に悩んでいる人はアナウンサーや俳優、声優を目指さない一般の人でも潜在的に多いことがわかります。
 サービス業や営業職で、マニュアル用語の反復を朝礼でやっている職場は多いですが、プロのボイストレーナーを招いたり、研修で演劇で行われるワークショップをしてみたりしたらどうでしょう。悪名高い「マニュアル接客用語」や心のこもっていない「声掛け」(「○○揚げたてです!」「△△ただいまお安くなっています!」)をするよりはるかにましだと思います。
 もしかしたら、自社の店員や営業マンの「モテ声」のファンになってくれることがあるかもしれませんよ。

 (「声の話・その2」に続く)

 おまけですが、自分でできる、声や言葉のトレーニング本を紹介します。
 いずれも著名な方が書かれているので、入手しやすいと思います。


★梶原しげる『口のきき方』(新潮新書)
 フリーアナウンサー・司会者で臨床家でもある梶原さんのロングセラー本。「正しい日本語」には議論があるだろうが、言葉を仕事に用いる人はまずは傾聴することが大事。梶原さんは他にも日本語についての本を多く出しているのでそちらもどうぞ。


★鴻上尚史『あなたの魅力を演出するちょっとしたヒント』(講談社文庫)
 劇作家で演出家である著者による著書だが、実践的な発声・発音レッスンではなく、感情や声などを楽しみながらコントロールする方法を記している。俳優よりも教師やビジネスマンを対象とした異色の本。それゆえに一般の人にも役に立つ。


★福澤朗『声と言葉の教科書 勝てる日本語 勝てる話し方』(東京書籍)
 おなじみ、人気アナウンサーによるコミュニケーション術の本。声だけでなく表情や姿勢などを、自分の経験を多く含んだユニークな筆致で記す。読み物としても面白いが、タイトルの「勝てる~」はいただけない。コミュニケーションは勝つためにあるのではないのから。


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