「スポットライト」

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 最近はtwitterばかりでいけませんね。どうしても140字で報告して楽しようとしてしまいます。そんなところから堕落するのでしょうね。

 ただ、140字では要約できない深い作品に出会ってしまうと、紹介の仕方に困ってしまって、そのまま書かずじまいになってしまいます。

 そんな映画を紹介しようと思います。アカデミー賞作品賞・脚本賞受賞、「スポットライト 世紀のスクープ」です。

 (写真がひどいのはガラケーで撮影したこれしかなかったから。営業妨害ですね、すんません)

「スポットライト」 「ボストン・グローブ」というアメリカの地方新聞社が、圧倒的な権威であるカトリック教会の腐敗を告発する実話が元になっています。「スポットライト」というのはグローブ紙の特報ページの名前で、このキャンペーンは後にピュリッツアー賞を受賞します。

 最初は誰も相手にしなかったネタでした。デスクのきまぐれのような職務命令で、たった4名の記者が取材を始めました。ネタ元も怪しげで、裏付ける被害者も多くありません。それに対して相手は警察・検察から地域の隅々まで力を持つ教会です。

 手探りで動く記者は、やがてそこにある恐ろしい事実をつかみます。取材を続けると当たり前のように取材妨害や「圧力」もかかります。最初はやんわりと。次第にはっきりとした形となって。それは記者も想像しなかった、おぞましい組織犯罪です。

 同じく実話(ウォーターゲート事件)を元にした「大統領の陰謀」を連想させますが、大きく異なるのは、21世紀に入ってからアメリカでもネットの存在感が増しつつあったことです。

 それと反比例するように、新聞も「社会の木鐸」としての役割を失っていきます。かつて映画の題材になったような「巨悪に立ち向かう正義の味方」という図式は成立しにくくなります。

 正義、真実、正論、言論の自由と反権力――この映画では政治や新聞を扱う作品に登場する「大文字の言葉」は希薄です。物語の始まりはグローブ紙の新任編集局長が、これからはネットに負けない紙面を作らなくてはならず、そのためには調査報道に力点を置くとの方針からでした。つまり、ジャーナリズム精神よりも会社の営業方針が先に立ちます。

 そこから変わり者のデスクが小さなネタを拾い上げ、「スポットライト・チーム」(特報部)がしぶしぶ腰を上げます。そこから弁護士や被害者の会を訪ねて話を聞き、裁判所に文書開示の訴訟を起こし、膨大な資料を読み解きます。当事者に直接当たって「クロ」だと確信し、裏を取るために情報源に接触します。そこにあるのは燃えるような正義感ではなく、ネタを摑もうと地道に取材を重ねる職業記者の仕事風景です。

 「ジャーナリズム」の「ジャーナル(journal)」は、もともと航海日誌のことです。いつ、どこで、何が起こったか、それはなぜか……。5W1Hを丹念に記述し事実を掘り下げることが調査報道であり、感情のままに怒りの鉄槌を振り上げることではありません。これは新聞だけでなく、暴露趣味のスクープを連発している「週刊文春」も同じです

 「マズゴミ」呼ばわりされて、先日の熊本・大分の地震でも大いに叩かれた報道関係者はもちろんですが、揚げ足取りのマスコミ叩きで溜飲を下げているネットユーザーも一見の価値があります。まあ、そう言ってもネット右翼らは見向きもしないでしょうが。

 正直、扱う題材は吐き気がするものなので、鑑賞後の後味はよくありません。それでも、GWに映画館へ足を運んでもらいたい一本です。



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