2013年11月25日01:13
おのぼりさん紀行②駕籠に乗る人、担ぐ人、そのまた草履を作る人≫
某アイドルグループの総監督が贔屓にしているトンカツ店で、カツ丼を食べてきました。
カツ丼が大好物であることを事あるごとに公言している人で、じゃんけん大会の前日にゲンを担ぐために若手メンバーを引き連れて行ったときの写真が実に美味そうだったので、フトコロ具合を気にしつつも、銀座の名店に足を踏み入れました。
ちょうどタイミング悪くお昼時でしたが、「そんなに待ちませんよ」との穏やかで気品の高そうな番頭さんのお顔を信頼して、しばし列に並ぶことに。予想よりも早くカウンターに案内されて、アイドルも食べたカツ丼、980円。銀座という土地を考えても、かなりの割安でした。
味はもちろん絶品。鉛の舌の私ですら、肉も油もかなりいい物を使っているのがわかりました。肉はやわらかく、卵の熱の入れ方もいい塩梅です。ひと口ずつ味わうよりも食欲が勝り、丼を離さず、一気に食べました。
お客さんは年配の気品ただようロマンスグレーの方が目立ちました。高価そうなスーツにオシャレなネクタイを締めたたたずまいは、一流の企業で勤め上げ、相当な役職に登り詰めたような自身があふれていました。もちろん、比較的若いサラリーマンも多かったのですが、下品な振る舞いはありませんでした。
そんな店内の空気を作っているのは、銀座という土地柄や、明治から続く伝統ということもありますが、調理場・テーブル・カウンター席を統括している番頭さんの役割が大だと感じました。
昼の忙しい時間でも、慌てることなく、にこやかに、上品に応対していました。ホール全体を見渡して配膳する女性スタッフに目配せをしながらお客さんを応対する姿は、ベテランホテルマンを連想させながらも、慇懃すぎる対応はありませんでした。その姿が店内の上質の雰囲気を作っているのでしょう。
考えてみれば、番頭さんの役割は重要で、世界的大企業になった企業経営者には、必ず補佐役・ナンバー2が控えていました。経営の神様・松下幸之助の大番頭・高橋荒太郎、本田宗一郎が初対面で実印を預けた副社長・藤沢武夫らが有名です。米アップルにもスティーブ・ジョブズと共同でパーソナルコンピュータを開発した仲間がいたそうです。
来年は大河ドラマで「軍師」黒田官兵衛がテーマですが、軍師、すなわち番頭さんの役割は企業規模に関わらずかくまで重要です。
会計のときに、名店の誇りを目元に蓄えたまま、上品かつきさくに「ありがとうございます」と挨拶されました。某アイドルグループの別のメンバーにも、やさしく声を掛けたそうです(注・このブログでは「ご主人」とありますので、もしかしたらこの方は店主なのかもしれません)。
マスコミやガイドブックなどでは料理人だけが注目されますが、裏方や補佐役も、「また来たい」と思わせる店を演出する重要なマンパワーです。

次の日は東京スカイツリーに行ってきました。墨田区という東京の下町にあり、浅草とセットで観光する人も多い場所だったのですが、商業施設「東京ソラマチ」を含め、最先端の科学技術の粋を集めた、近代的できれいな場所でした。
反面、ちょっとがっかりしたのが、豪華過ぎて下町らしさがまったく見られないのですね。東京の下町というと、寅さん、こち亀、落語の数々の舞台、最近では阿部寛が主演した東野圭吾の小説『新参者』シリーズなどを連想します。人情深く、人とのふれあいがあって、ちょっと猥雑さが残っているのかと思ったら、何もなかったのが寂しく思いました。
でも、並んでいた時にヒマを持て余して、整理している女性やチケット窓口の女性を見ていたのですが、安心しました。化粧にしろ、髪型にしろ、ナマの人間らしさを満面にたたえた顔立ちの方ばかりでした。
……、言ってる意味、わかりますか?わからなければいいです。私も地雷を避けながらこわごわ書いていますから。
悪口じゃないんですよ。普通の企業だったら、派遣会社を通じて集めた若くきれいな女性に目鼻立ちを整えるメイクを施し、無理に口角を上げた画一的な笑みを絶やさない女性を窓口に並ばせます。これは人間の能力を超えた生理的作業です。同じ接客業としては「これならロボットを置いといた方が安上がりじゃないか?」と憤りさえも覚えます。
スカイツリーでは、「生身の人間」が応対していました。下町の、というか、人間くささが出たスタッフでした。文豪に愛された山の上ホテルで、マニュアル化されてないサービスが大事にされ、客も垢抜けない従業員を楽しみにしていたというエピソードを連想させました。
テレビやビジネス雑誌では、社長や名物社員がカリスマとして持ち上げられることもよくあります。でも、その会社を支えているのは、目立たなくともトップの代わりに全体に目を光らせる「軍師」や、最前線で敵兵(この場合は客)と対峙する「歩兵」です。もちろん「兵站」も重要です。
これを確認できただけでも、今回の「研修旅行」、有意義なものだったと思っています。これで風邪さえ引かなければもっとよかったのに。
カツ丼が大好物であることを事あるごとに公言している人で、じゃんけん大会の前日にゲンを担ぐために若手メンバーを引き連れて行ったときの写真が実に美味そうだったので、フトコロ具合を気にしつつも、銀座の名店に足を踏み入れました。
ちょうどタイミング悪くお昼時でしたが、「そんなに待ちませんよ」との穏やかで気品の高そうな番頭さんのお顔を信頼して、しばし列に並ぶことに。予想よりも早くカウンターに案内されて、アイドルも食べたカツ丼、980円。銀座という土地を考えても、かなりの割安でした。
味はもちろん絶品。鉛の舌の私ですら、肉も油もかなりいい物を使っているのがわかりました。肉はやわらかく、卵の熱の入れ方もいい塩梅です。ひと口ずつ味わうよりも食欲が勝り、丼を離さず、一気に食べました。
お客さんは年配の気品ただようロマンスグレーの方が目立ちました。高価そうなスーツにオシャレなネクタイを締めたたたずまいは、一流の企業で勤め上げ、相当な役職に登り詰めたような自身があふれていました。もちろん、比較的若いサラリーマンも多かったのですが、下品な振る舞いはありませんでした。
そんな店内の空気を作っているのは、銀座という土地柄や、明治から続く伝統ということもありますが、調理場・テーブル・カウンター席を統括している番頭さんの役割が大だと感じました。
昼の忙しい時間でも、慌てることなく、にこやかに、上品に応対していました。ホール全体を見渡して配膳する女性スタッフに目配せをしながらお客さんを応対する姿は、ベテランホテルマンを連想させながらも、慇懃すぎる対応はありませんでした。その姿が店内の上質の雰囲気を作っているのでしょう。
考えてみれば、番頭さんの役割は重要で、世界的大企業になった企業経営者には、必ず補佐役・ナンバー2が控えていました。経営の神様・松下幸之助の大番頭・高橋荒太郎、本田宗一郎が初対面で実印を預けた副社長・藤沢武夫らが有名です。米アップルにもスティーブ・ジョブズと共同でパーソナルコンピュータを開発した仲間がいたそうです。
来年は大河ドラマで「軍師」黒田官兵衛がテーマですが、軍師、すなわち番頭さんの役割は企業規模に関わらずかくまで重要です。
会計のときに、名店の誇りを目元に蓄えたまま、上品かつきさくに「ありがとうございます」と挨拶されました。某アイドルグループの別のメンバーにも、やさしく声を掛けたそうです(注・このブログでは「ご主人」とありますので、もしかしたらこの方は店主なのかもしれません)。
マスコミやガイドブックなどでは料理人だけが注目されますが、裏方や補佐役も、「また来たい」と思わせる店を演出する重要なマンパワーです。
次の日は東京スカイツリーに行ってきました。墨田区という東京の下町にあり、浅草とセットで観光する人も多い場所だったのですが、商業施設「東京ソラマチ」を含め、最先端の科学技術の粋を集めた、近代的できれいな場所でした。
反面、ちょっとがっかりしたのが、豪華過ぎて下町らしさがまったく見られないのですね。東京の下町というと、寅さん、こち亀、落語の数々の舞台、最近では阿部寛が主演した東野圭吾の小説『新参者』シリーズなどを連想します。人情深く、人とのふれあいがあって、ちょっと猥雑さが残っているのかと思ったら、何もなかったのが寂しく思いました。
でも、並んでいた時にヒマを持て余して、整理している女性やチケット窓口の女性を見ていたのですが、安心しました。化粧にしろ、髪型にしろ、ナマの人間らしさを満面にたたえた顔立ちの方ばかりでした。
……、言ってる意味、わかりますか?わからなければいいです。私も地雷を避けながらこわごわ書いていますから。
悪口じゃないんですよ。普通の企業だったら、派遣会社を通じて集めた若くきれいな女性に目鼻立ちを整えるメイクを施し、無理に口角を上げた画一的な笑みを絶やさない女性を窓口に並ばせます。これは人間の能力を超えた生理的作業です。同じ接客業としては「これならロボットを置いといた方が安上がりじゃないか?」と憤りさえも覚えます。
スカイツリーでは、「生身の人間」が応対していました。下町の、というか、人間くささが出たスタッフでした。文豪に愛された山の上ホテルで、マニュアル化されてないサービスが大事にされ、客も垢抜けない従業員を楽しみにしていたというエピソードを連想させました。
テレビやビジネス雑誌では、社長や名物社員がカリスマとして持ち上げられることもよくあります。でも、その会社を支えているのは、目立たなくともトップの代わりに全体に目を光らせる「軍師」や、最前線で敵兵(この場合は客)と対峙する「歩兵」です。もちろん「兵站」も重要です。
これを確認できただけでも、今回の「研修旅行」、有意義なものだったと思っています。これで風邪さえ引かなければもっとよかったのに。