子ども読書の日

大橋輝久

2020年04月23日 06:45

こんなポスターが、院内の図書室に貼ってありました。


今日、4月23日は「子ども読書の日」なのだそうです。

愚かなことを。

どうせ官僚の天下り団体が形だけやるのでしょう(そして効果測定はしない)。百害あって一理なしです。

今年のおすすめ本は下のアドレスから見られます。

http://www.dokusyo.or.jp/jigyo/wakaihito/wakaihito.htm

いい本が並んでいます。読んでもらいたいものばかりです。

でも、根本的に間違っています。どんな名書でも、頭を押さえつけて読ませるものではありません。

体育の持久走の授業で、得意な人は真っ先に運動場に出て、順位やタイムを競っていました。そんな人は、大人になっても市民マラソンを楽しんでいます。

一方、私のような運動オンチは拷問でしかありません。もちろんマラソンなんか縁がありません。

同じように、活字だけの本に苦手意識がある子どもに、どれほどいい本を与えようが、逆に本嫌いを増やすだけです。

もっとひどいのは読書感想文です。子どもは賢いので、教師の顔色をうかがって、気に入る作文を書きます。「ごんぎつね」を読んで「ごんは余計なことをするから死んだんだ。自己責任だ」と書く子どもはいません。

読書感想文に象徴する学校という「装置」は、忖度(目上の者に従順な態度)を身に付けさせる機能があります。

「子ども読書の日」なるものを作るなら、逆に子どもが大人に読んでほしい本を教える日も作ったらどうでしょう。

大学時代の教職課程で、小学校の校長を勤めた先生がおり、私も特別扱いで末席にいました。校長のとき、先生は児童に、どんな本が好きかを尋ねました。

帰ってきた答えが「ドラゴンボール!」

先生は、すぐに「ドラゴンボール」を全巻購入して読破しました。

他にも「冬彦さん」(ドラマ「ずっとあなたが好きだった」)など若者文化も聞いていました。

これがプロの教師か! 弱冠二十歳の私は、嘆息するばかりでした。

だって、あなたが定年が見えた50代半ばで、校長や民間企業の役員になって、小学校に好きなことを聞けますか? そして、全巻購入して読めますか?

今ならば「ONE PIECE」全巻取り寄せて、「鬼滅の刃」のマンガとアニメを観て、人気ユーチューバーの動画を試聴するようなものです。

教師が子どもを対象にする仕事であること、過労死ラインを超えるほど多忙なことを差し引いても、私にはとてもできません。

その先生は、サブカルチャーばかりでなく、広く興味を持つ多読家で勉強家でした。わずか65歳で急逝されました。形骸に接する機会から、わずか1年半のことでした。

「子ども読書の日」なんて馬鹿らしいことはやめて、「大人が子どもに読書を学ぶ日」をやったらいいのにと、先生の優しいお顔を思い出しながら思っています。

関連記事