大海に出た蛙

カテゴリー │映画・演劇・その他

 昨日、日本中が野球に熱中しているころ、私は久々にお芝居を観てきました。浜松にある「劇団遊演地」という劇団です。キャラメルボックスの戯曲を上演していました。

 感想ですが……。
 ほう。
 なかなかやるじゃん。
 俳優は堂々として立派な演技を見せていました。演出も細かな点まで配慮が行き届いていました。抽象的にしか書けないのですが、ステージ空間を会場全体に立体的に増幅しており、演劇の持つ特性が存分に発揮されたものでした。こうした、映画やテレビでは絶対に観られない演劇性をぶつけられると、わざわざ会場まで足を運んだ甲斐があるものです。上演時間中、批評的視点を忘れずに、でもしらけることなく観ることができました。

 演劇にあまり縁のない私がこの劇団を知ったのは、以前、ここのメンバーだった人と知り合いで、チケットを買ってくれとせがまれたのがきっかけです(学生時代、周りに演劇をやっている人が大勢いて、チケットノルマをこなす苦労を目の当たりにしていたので)。
 内容は、良くも悪くも女子高の雰囲気を色濃く残したものでした。もともと、浜松海の星高校という学校(演劇コースがある)の卒業生が母体となっていて、簡素ながら、若さにあふれた華やいだ舞台でした。その反面、作品としては学園祭や高校演劇コンクールの甘さと馴れ合いを引きずっていました。
 客席も、同窓生や父兄らしき人が目立っていました。プロを志向するクリエイターにとって、身内のお愛想やお追従やおべっかなど、何の役にも立たないばかりか、害悪でしかありません。
 ですから、終演後のアンケートには相当に激烈な感想を書いた記憶があります。普通の人だったらPTSDになるほどのものです。
 それでもDMを送ってくれていたので、意気に感じて(プラス仕事が休みだったので)行ってみました。

 送ってくれたチラシによると、メンバーは一年くらい休んで、愛知万博や他の劇団で活動していたようです。対外的な活動から得た刺激がいい方向へ作用したのではないかと勝手に思っています。
 なんだかんだ言っても静岡は田舎です。他の都道府県に比べて文化もビジネスも甘いところ、ぬるいところが多々あります。これは大阪から戻ってきたり東京へ行ったときに強く感じたことです。だからこそ、井の中の蛙は大海を知ることが必要だと、昨日改めて思った次第です。

 それにしても、地元の若い人たちの成長を目の当たりにできるのはうれしいものです。今後もいろんなとこに行きたいと思うのですが勤務体系の都合で時間が……。贅沢は言いません、休みがほしい……。


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この記事へのコメント
すばらしいですね。文化に地方も中央もありません。都会が文化的に一日の長があるとするならさまざまな文化を飲み込む懐の深さでしょう。ぜひ静岡初で全国制覇を!
Posted by ogacci at 2006年03月22日 18:10
静岡発です。m(u u)m
Posted by 小笠原です。 at 2006年03月22日 23:56
ちなみに私、関西舞台文化懇話会のNPO法人化の際にお手伝いしました。
Posted by ogacci at 2006年03月22日 23:57
 ありがとうございます。そうおっしゃって下さるとうれしいですね。
 昨今は地方発の文化が目ざましく躍進しています。演劇はよくわかりませんが、放送なら北海道や名古屋から活きのいい番組やタレントが飛び出していますし。
 浜松では音楽の街づくりに官民挙げて取り組んでいます。今はまだ畑を耕し種を蒔いている段階ですが、ゆっくりでいいのでうまく花を咲かせてくれればと期待しています。
Posted by 大橋輝久 at 2006年03月23日 09:55
たくさんの種をまくことが必要です。種は多ければ多いほどいいです。文化だけは過当競争にはなりませんから。
Posted by ogacci at 2006年03月23日 23:37
 種を蒔いた後も丹念に育てることも重要ですね。最近は性急な町おこしや経済効果を期待してスポーツチームや映画ロケを誘致することがよくありますが、当地のジュビロ磐田だって、Jリーグ昇格まで20年、全国完全制覇まで30年もかかったのですから。
 私の高校時代の先生は地味なスポーツの水球で選手だったのですが、顧問として高校を全国大会の常連にするだけではなく、地元の小中学生向けの水球教室もしたりしています。そういったマスコミがスルーする地道な努力をしている人も応援したいものです。
Posted by 大橋輝久 at 2006年03月24日 13:26
その通りです。
育てるマーケティングが必要です。
現在のマーケティングは、リピーターのレベルを上げるのですが、そうなると、どうも入門者がおきざりにされます。
裾野をどのように広げていくかが大切です。
それが、コンテンツプロデューサーの使命ではないでしょうか。
Posted by ogacci at 2006年03月25日 08:53
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